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数年ぶりに奈良に行った理由はコレ。

正倉院の再現模造品を一挙に集めた展覧会を観てきました。
明治時代から綿々と作られている、正倉院の宝物の再現模造品を、です。
わざわざ模造品を観に行くの?と思った、そこの方!!
正倉院の模造品はただの模造品ではないのです。

工芸の世界では、未だに奈良時代の工芸技術が史上最高峰だと言われてます。

明治の技術もびっくりするほどなのに。
奈良時代はその上だというのです。

でも毎秋開催されている正倉院展は、恐ろしく混むので、ゆっくり間近で観るなんて夢のまた夢です、、、

そして、作られた当時の色彩や、欠損のない完品を観られるものはやはり少ない。

技術の再現と継承を目的に。
材料もほぼ同じものを贅沢に使い。
当代最高峰の職人や科学を駆使して可能な限り同じ工程・技術を再現して作り上げる。
正倉院の再現模造は、ただの模造品ではなく、現代で本物と同じものを作ることが、目的なんです。

何振もの太刀や絹織物だけではなく、書物類まであったのには少し笑いましたが(笑)

当時の写経者の休み申請書の理由欄が、氏神さまの祭祀のため・腰痛治療のため・母親の看護のため、などなど、、、
今と変わりませんね(笑)
その上、写経者のお給料明細や、各国の戸籍まで。
紙が貴重品だったから、役所の保管期限が切れたものが裏紙として再利用されてるのは知ってましたが(笑)
まさか、お財布事情を1300年後の世に晒されてるとは。
本人もびっくりでしょうねぇ、、、

他には、宝物を収める箱やら、双六盤に楽器や聖武天皇の御袈裟など。
多種多様な宝物の再現模造品が展示されてる中。

私の目的は、『螺鈿紫檀五弦琵琶』!!
正倉院の宝物の中でも、とりわけ豪奢な逸品です。
鼈甲と夜光貝と、紫檀。
全て熱帯の国の材料ばかりです。
古代の日本では、材料を揃えるだけでもかなりの苦労と散財をします。

現代なら、沖縄あたりなら夜光貝と鼈甲は何とか手に入るかな??
紫檀は熱帯の国にしか生えないので無理ですね、、、
沖縄にも無いと思います。

その上、線描した夜光貝や、鼈甲の透明なところだけ選んで、裏側に彩色して嵌め込む象嵌細工なんて、気が遠くなります、、、

実物の螺鈿紫檀五弦琵琶を見たことがあります。
激混みの正倉院展に行ったのは、実はその一回きりですが(笑)

古びてるだけ、やはり本物の方が存在感があります。
実際に弾いた跡も残ってるので、そこも再現複製品との違いですね
実際に再現模造品を弾いた音も流れてましたが。
大昔に本物を弾いた音を録音したものも聴いてるので、本物より音が高いように思いました。
録音技術の問題もあるので、そのまま比較はできないと思いますが

こんな絢爛豪華な琵琶を実際に弾いてたのは、やはり聖武天皇かその身近な方なんでしょうねぇ、、、
地味ですがひどく手の込んだ綴織の御袈裟といい、この琵琶や、お身周り品といい。
聖武天皇って、現代でも考えられないほどの、本当の本物のおぼっちゃま育ちなんだなぁと改めて思いました。

そういえば。
今回の展示に、悪僧で有名な道鏡さんの真筆の再現模造品も出てました。
官人のきちきちとした、とても整然と美しく書かれた文字を山ほど見た後に。
道鏡さんの文字を見ると、、、悪筆です(笑)
現代に書かれたとしても、決して綺麗ではないけど。
当時としたら、かなりの悪筆ではないでしょうか。
ぶっとい筆跡で書かれた文字は、官人のソレの10倍太い(笑)
天下に並びない悪僧といわれた人ですが、、、ちょっと親近感がでました(笑)
私には遠い大昔の歴史の中の人ですが、本当に生きていた人なんだなぁ。
悪筆だったなんて、直筆見ないとわかりませんものね。
教科書には載ってない、その人が生きていた痕跡です。

そんなこんなで、とても面白かった♫