no title

京都市動物園の飼育員さんが書かれた本です。
飼育員になるまで育てた動物の話、飼育員になってから担当した動物の話。

中でも手塩にかけて育てた、ゴリラのことは自分の子供の小さい頃を語るような文章でした。

くりっくりの目玉で、無邪気にこちらを見ている可愛いおんぶゴリラ。
この無邪気な写真を使った表紙に目が止まり、手に取った本です。

でも、この可愛い赤ちゃんも。
いずれは大人になり、柵越しにしか会えなくなります。
大人になったら、育ての親を忘れるからではありません。
種が違うからです。

それでも、信頼関係があればメスだったらオリの中に入って子育ても手伝わせてくれるし。
飼育員の見真似で鍵をあけて部屋から脱走し、隣のチンパンジーも扉を開けてあげて一緒に水掛け合戦を楽しむ。
見つかってお縄になったら、素直に飼育員に手を引かれてスゴスゴと部屋に帰る(笑)
運動場でうたた寝しだした飼育員を思いやって、そのまま寝かせてもくれる(笑)

鳥類とかキリンの話もありましたが、やはり著者が一際思い入れのある類人猿の話が1番面白い。
類人猿とは、やはり他の動物よりずっと人間に近いのだ、としみじみ思うエピソードが沢山あるのでした。

やはり生き物だけに、上手く助けられず死なせてしまった話もありました。
とりわけその死の話は淡々と語られている文章に、当時はやはりとてもお辛かったのだろうし、今でも思い出すと後悔もあるのだろうと拝察します。

やはり飼育員になる方は、根っからの動物好きなのだとしみじみ感じた本でした。
お子様と一緒に読んでもいいと思います。
動物好きが高じて飼育員になった、優しいおじさんが、昔話を思い出しながら話すような文体で綴られています。